【令和8年4月1日施行】「所有権の登記名義人についての符号の表示」とは?

相続登記

令和8年4月1日から、登記実務に新たな運用が始まります。
「所有権の登記名義人についての符号の表示」に関する通達(令和8年3月27日付け法務省民二第525号)で、登記名義人が死亡または失踪宣告により権利能力を失った場合に、登記記録上でその旨を符号(◇)で示す運用を可能にしました。

本記事では、制度の背景、目的、表示の要件、表示されないケース、登記記録への記録方法まで、実務目線でわかりやすく解説します。


目次

  1. 制度創設の背景と目的
  2. 「所有権の登記名義人についての符号の表示」とは
  3. 符号の表示が行われる主なケース
  4. 符号の表示をしないケース
  5. 登記記録にはどう記載されるのか
  6. 実務上のポイント
  7. まとめ

1. 制度創設の背景と目的

この制度は、所有者不明土地の増加という社会的課題を背景に創設されました。
近年、相続登記がされないまま長期間放置される土地が増え、土地の管理や公共事業、地域開発に支障が生じるケースが問題となっています。

そこで法務省は、次の2点を目的として本制度を導入しました。

目的1:発生予防

所有者不明土地が新たに発生することを抑える

目的2:円滑化

土地の適正な利用や、相続による権利承継をより円滑に進める。

つまり、この制度は単に登記を見やすくするだけではなく、将来の所有者不明土地を減らし、相続や利活用の停滞を防ぐための仕組みといえます。


2. 「所有権の登記名義人についての符号の表示」とは

この制度では、登記官が、自然人である所有権の登記名義人について、
その人がすでに死亡または失踪宣告により権利能力を失っていると認めるとき、職権でその旨を示す符号(◇)を登記記録に表示することができます。

ここでのポイントは次のとおりです。

  • 対象は自然人の所有権登記名義人
  • 状態は死亡または失踪宣告
  • 表示方法は職権
  • 表示内容は符号(◇)

つまり、相続登記の前段階として、登記記録上で「この名義人はすでに権利主体ではない可能性がある」ことを示す仕組みです。


3. 符号の表示が行われる主なケース

符号の表示は、登記官が次のような事務の過程で得た情報をもとに行われます。

3-1. 代表登記所からの通知

代表登記所で、住民基本台帳ネットワーク情報(住基ネット情報)や戸籍情報の照会により、死亡または失踪宣告が確認された場合です。

3-2. 管轄登記所独自の調査

次のような手続や調査の過程で判明した場合も対象になります。

  • 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第44条第1項に基づく調査
  • 法務局地図作成事業
  • 他の登記申請の審査過程
    例:法定相続分による相続登記など

3-3. 関係機関からの情報提供

不動産登記法第151条に基づき、地方公共団体の長等から情報提供があった場合も含まれます。

つまり、符号の表示は「申請があったから行う」のではなく、行政内部の情報連携や審査の中で確認された場合に職権で行われるのが特徴です。


4. 符号の表示をしないケース

すべての場合に符号が付くわけではありません。
次のいずれかに該当する場合は、符号の表示は行われません

4-1. すでに符号が表示されている

同じ名義人について、すでに◇が付されている場合です。
重ねて表示する必要はありません。

4-2. 通知情報と登記記録が一致しない

通知された死亡者・失踪宣告者の情報が、登記記録上の名義人と一致しない場合です。

4-3. 相続人申告登記が既になされている

不動産登記法第76条の3第3項の相続人申告登記がすでにある場合は、一定の情報が登記上反映されているため、符号の表示は行われません。

4-4. 長期相続登記等未了土地である旨の付記登記がある

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第44条第1項に基づく、長期相続登記等未了土地である旨の付記登記がされている場合も除外されます。

4-5. 相続財産の分離等がされている

次のような登記がされている場合も表示されません。

  • 相続財産の分離の登記
  • 相続財産法人への名称変更
  • 遺贈による一部移転登記 など

このように、既に相続や財産管理に関する別の登記が存在する場合は、符号表示を重ねない運用になっています。


5. 登記記録にはどう記載されるのか

符号の表示は、所有権の登記に付記登記する方法で行われます。
つまり、元の所有権登記とは別に、補足的な登記として記録されます。

記録事項

登記記録には、次の事項が記録されます。

  • 登記の目的
  • 名義人の氏名
  • 符号(◇)
  • 登記年月日

留意点

符号を表示する際、変更前の氏名や住所に抹消記号(下線)は付しません。

これは実務上重要なポイントで、通常の訂正や更正とは異なり、過去の記載を消すのではなく、現況に応じて符号を付加するという運用になっています。


6. 実務上のポイント

この制度を実務で理解するうえでは、次の3点が重要です。

6-1. 相続登記の促進と連動する制度

◇の表示は、相続登記が未了のまま放置されることを防ぐ方向で機能します。
したがって、相続が発生したら早めに登記手続を進めることが重要です。

6-2. 所有者不明土地対策の一環

本制度は単独で完結するものではなく、
相続登記の義務化所有者不明土地対策全体の中で位置づけられる制度です。

6-3. 登記記録の見方が変わる

今後は、不動産登記を確認する際に、名義人の横に◇が表示されているかどうかが、
その土地の権利関係を把握する手がかりになります。


7. まとめ

令和8年4月1日から導入される「所有権の登記名義人についての符号の表示」は、
死亡・失踪宣告があった登記名義人を、登記記録上で◇の符号により示す制度です。

この制度の目的は、

  • 所有者不明土地の新規発生を防ぐこと
  • 土地利用と相続承継を円滑にすること

にあります。

また、符号の表示は以下のような情報を端緒として職権で行われ、
すでに相続人申告登記や長期相続登記等未了土地の付記登記などがある場合は表示されません。

不動産登記実務、相続対策、土地活用を考えるうえで、今後ますます重要になる制度といえるでしょう。


よくある質問(FAQ)

Q1. 符号(◇)が付くと、所有権がなくなるのですか?

いいえ。符号は死亡または失踪宣告が確認されたことを示す表示であり、直ちに所有権を消すものではありません。相続手続やその後の登記が必要になります。

Q2. 符号は誰が付けるのですか?

登記官が職権で表示します。

Q3. 符号が付いたら何をすべきですか?

通常は、相続登記の実施を検討することになります。必要に応じて専門家へ相談するとよいでしょう。

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監修 司法書士 中野大輔  なかの司法書士事務所

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